有機野菜栽培は化学肥料栽培よりおいしい?

これも誤解によるものが多いのですが、「有機栽培だから、おいしいに決まっている」という人がいまだに多いようです。
野菜のおいしさというのは、有機栽培かどうかにあまり関係がありません。
肥料の成分バランスによるところが大きいのです。
有機栽培では、自分で堆肥などを作るのですが、
その過程でうまく発酵した堆肥を使わないと、おいしい野菜はできません。

 

野菜の栽培は、「まず土作りから」と言われるのはこのためです。
追肥に使う肥料も、ぼかし肥といって独自のものを使う農家が多いのですが、
これもバランスを欠くとおいしい野菜ができません。
栄養の面から見ても、必ずしも有機栽培が勝っているというわけではありません。

 

イギリスのある研究では、有機栽培で育てられたブロッコリーより、
普通に育ったブロッコリーの方がはるかに抗酸化物質を含んでいることがわかったそうです。
ただ、実験に使ったサンプルが少なく、これがすべての有機栽培に適合するかどうかは不明です。

 

しかし、農薬を使う普通の栽培であっても、栄養価のある野菜は作ることができるということです。
では、どんな野菜がおいしいのかというと、はじめはすくすくと育ち、
ある程度大きくなった時期にストレスを受けた野菜がおいしくなるようなのです。

 

トマトの場合、収量は落ちますが、極端に水を絞った栽培方法があります。
これは水分ストレスを与えることで、水っぽさがなくなり、味の濃い野菜ができるのです。

 

寒ジメほうれん草というのが最近定着してきましたが、
これもトンネルですくすく育ったほうれん草を、出荷前に寒さにさらすことで
糖分を葉っぱに集中させ、おいしくなるのです。
このときのストレスは寒さになります。

 

おいしい野菜というのは、有機栽培であるかどうかよりも、その育て方の方が大きく影響を及ぼしているといえます。
しかしながら、化学肥料ばかり使う畑は、年々、
土に含まれる腐植などの有機物がなくなり、アミノ酸も吸収されなくなります。
このことが食味に影響されることがわかってきています。